腹膜透析(入浴)
お風呂は腹膜透析をやる上で一番難しいことだった。
おなかから管が出ているため、毎日の消毒・洗浄は欠かせない。
もちろん清潔操作。手を洗い消毒して臨む。
手の菌から出口部が感染したり、お風呂のお湯から感染したり。
感染して膿が出ると、本人は痛がるし、菌が管を伝っておなかに入って腹膜炎になったりするのを阻止するため、
すぐに抗生剤の点滴をしてもらう。
それでも治まらないときはまた管の入れ替え手術になる。
かわいい子供に少しでも痛い思いがないように、ケアする私が徹底的に気をつけなきゃ。
●●●
お腹から管が出ている部分を覆うガーゼをはずして、状態のチェック。
ハレがないか、膿がでていないかを見る。
痛がらない程度に押して中に膿が溜まっていないか、ハレて硬くないかも見る。
●●●
管と出口部がお風呂で濡れないように、専用のパックか、小児用採尿パック(おしっこパック)を貼る。
ミナには、肌のことを考えて、粘着性の弱いおしっこパックを貼っていた。
管の巻き方にママたちそれぞれのこだわりがある。
私は管を巻く向きと方向、それから管をパックの中に収めるときに、どうしたら出口部に負担がかからないかを毎日必死で探した。
そしてとうとうそれを見つけて、今度はどうしたら素早く出来るか、など、どんどんスムーズに出来るよう変えていった。
●●●
おしっこパックはすぐに湯船の水が入ってしまうので、周りに優肌絆を貼る。
いろいろ試して、ニチバン製の白くて太いタイプの紙テープが一番良かった。
ちょうどいいくらいの粘着性。毎日使うので強すぎると肌があっという間に荒れてしまうし、弱いと湯船ですぐにはがれてしまうから。
●●●
精製水を開けずに湯船につけておく。
そのあとはお風呂マットでシャワーを使い、体を洗う。
ミナは機嫌が悪いとすごく怒って暴れた。
くだを守るパックが剥がれないように気をつける。
●●●
ベビーバスに浸からせ、ゆっくり歌を歌ったりして過ごす。
ミナはこの時間がとても幸せそうだった。
体を洗うまで怒っていたのに、ここで泣き止むこともあった。
(たまにウンチをしてしまうとそれはもう大変。)
●●●
湯船のあとはお腹の出口部ケア。
お湯をかけて温かくしたお風呂マットに寝かせ、しっかり手を洗い、ゆっくりパックを剥がす。
あらかじめ湯船につけて温めておいた精製水でお腹の出口部を少し濡らし、泡で優しく洗う。
殺菌作用のある『クリアレックス』を愛用。
泡フォームを見つけてからは泡フォームを使う。
泡はじかに手をつけずに泡だけをつけて優しく洗える。
リキッドだとなかなか泡立たないし、お湯で流しにくい。
ただでさえ殺菌効果をうたう製品なので、洗剤が残ると肌が荒れて、弱ったところで感染すると思う。
●●●
泡で洗ったあとは残りの製精水全部をかけて泡が絶対残らないように、しっかり落とす。
●●●
脱衣所へ出て、まず大きめの滅菌ガーゼで出口部を覆って太いテープで簡単にとめる。
(タオルがじかに出口部に触らないようにするため。何の菌がいるかわからないし。)
体をくすぐりながら拭いて(ミナ大喜び)、オムツをあてる(よくここでウンチするから)。
●●●
出口部のガーゼを外し、イソジンで消毒。
●●●
生理食塩水に圧をかけてイソジンを流し、滅菌ガーゼで優しく、しっかり拭く。(水分が残ったまま固定するとすぐ肌が赤くなるから)
●●●
新しい滅菌ガーゼで出口部をたすきがけで覆い、細い優肌絆で固定する。
管をオムツで固定して、服を着せて、おしまい♪
始めはこんなこと、毎日していかなきゃいけないんだ・・・
普通の子みたいに、一緒にお風呂にはいったりできないんだな・・・
なんて思ったものだ。
そう思うのも束の間、赤ちゃんの管の感染は多いよ、とは聞いたが、まあ感染は日常茶飯事といったところか。
周りの透析仲間のベビー達もミナも感染を繰り返し、ミナは入れ替え手術は免れたものの、周りの子達は
幾度となく入れ替え手術を繰り返していた。
入れ替え手術は動かないように張り付けにされるし、一週間抱っこもできないし、子供たちにとっては痛いし、これほどのストレスはないだろう。
仲良くなったママ友達と、毎日励ましあったり不安な気持ちも正直に話しあったり、たくさん一緒に泣いた。
子供のつらそうな姿を見るのは身を裂かれる思いだった。
なんとか笑って笑顔を見せてやるのが精一杯だった。
こんな経験を休まずしていると、立ち止まって泣いてる暇なんてなくなった。
なんとか感染から守れるように、自分なりに熱を持って没頭し、いい方法を探しに探した。
だから、感染がわかるといつも悔しくて泣けた。
その度に、手を抜くな!って自分を叱った。
先生と意見が合わなくて話し合ったりぶつかったりもした。
そのときは『悪いことしたかな・・・』とも思ったけど、今思うとそれでよかった。
信頼していたからできたことだから。
だって、はじめてミナのために出来ることだったから、真剣にもなるよ。
大切な宝物のような経験だった。
絶対に忘れない。